警察の体質は「つらくても根性で乗り切れ」。だからこそ人間味ある上司の優しさは特別だった

警察学校を卒業してまだ1か月の頃。

交番勤務をしていた時で、出勤日の朝からとても体調が悪い日がありました。

計ってはいませんが少し熱もありそう。

 

しかし警察では「体調が悪いので休みます」などもちろん言えません。

こんなに体調悪いのに夜勤なんてできるかな、と思いながら勤務に入りました。

 

とにかく事件事故が発生しませんようにと祈りました。

 

確か夕方頃までは事件事故の発生はそんなに多くはなく、何とかやっていました。

 

しかし交番で夕ご飯を食べた頃から、いよいよ体調が悪化。

体の関節も痛くて間違いなく熱もある。

 

朝の段階で、交番長の警部補には「今日はちょっと体調が少し悪くて」とは言っておきました。

 

しかし「ちょっと悪い」というレベルから「本当にきつい」というレベルまで悪化してきてしまいました。

 

どうやら顔色がかなり悪かったらしく、先輩が「お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」

 

私「朝からあまり体調よくなくて」

先輩「体温計があるから熱計ってみろ」

 

計ってみたところやはり38℃オーバー。

寒気、関節の痛み、そりゃ見た目にもわかるってもんです。

 

先輩「お前もっと早く言えよ。交番長どうします?こいつ38℃以上ありますよ」

警部補(50代半ばベテラン)「そんなに?まだ夜間帯はこれからだぞ。つらいか?」

私「はい、すいません」

 

まさに大変な時間帯はこれからです。ここからが長い長い夜間帯です。

 

一件でも逮捕事案が入れば一睡もできないのが交番勤務です。

 

今の私では女性の酔っ払いでも倒されてしまうかも。

 

この時が確か夜の8時から9時頃でした。

 

立ってるだけでもつらい状態。

交番長には行ったけど、きっと「人員に余裕はないから死ぬ気でやれ」と言われて終わりだろうな、と思っていました。

そうしたら交番長から

「お前は今日早寝のグループで寝ろ。10時から仮眠時間だからそれまでは何とかがんばれ」

交番長からの意外な優しいお言葉。

「はい、ありがとうございます。」

あと1時間ちょっとすれば仮眠に入れることになりました。

フラフラでしたから、この時に交番長の優しさは身にしました。

しかし予想外な優しさはこれで終わらなかったのです。

 

夜10時になり、早寝グループは仮眠室へ。

私も一緒に眠りにつきました。

体は熱い、関節は痛い、頭はボーッとするし、一瞬で眠りに入りました。

たった4時間の仮眠でもその時の私にはどれだけありがたかったか。

しかし夜中2時に起きてまた勤務に戻ることを考えると怖くなる。
そう思いながら眠りにつきました。

気が付くと先輩の声が
「おい、起きろ」

私「あぁすみません起こしてもらってしまって」

先輩「体調はどうだ?」

私「あまり変わらないですけど、寝て少しすっきりした気がします」(実際は全然つらい)

と言ったところで、あれ?と違和感を感じました。

夜中2時といったら窓の外は真っ暗のはずです。

それが完全に明るくて日が昇っていました。

慌てて時計を見た
え、7時?

早寝グループは夜10時から2時まで4時間仮眠してその後勤務に復帰。
2時から6時が遅寝グループの仮眠時間です。

その遅寝が起きる時間よりもさらに遅い時間まで寝てしまったのです。

なんと交番勤務の日に9時間も寝てしまったのです。

私がここで寝ている間に、早寝が起きて、さらに遅寝が来て寝て、さらに遅寝が起きていったのです。
私はその間まったく気が付かずずっと寝ていたのです。

早寝でも遅寝でもなく、通し寝をしてしまいました

慌てて先輩に「すみません全然気が付かなくて」

先輩「交番長の判断だ。お前を起こしても役に立たないだろうから放っておけってよ。ほら起きて交番長のとこ挨拶行ってこい」

慌てて起きて交番長のところに
「すみませんでした。」

交番長「おぉ起きたか。お前ずいぶん寝たな。どうだ体調は?このことは誰にも言うなよ」

この交番に来て初めて人の優しで泣きそうになりました。

起こしても役に立たないとか、言葉は悪いけど、寝かせてくれたんだと思いました。

厳正な勤務という意味ではやっていいことではありません。

ずっと休憩しているなら、本来は年休申請するのが規則。

もし組織に知れたら、責任を負うのは交番長です。

しかも心配して寝かしてやったとは一言も言わない。なんて粋な計らい。

つらい時に助けてもらった優しさって忘れないですね。

「本当にありがとうございました。すみません」と何度も謝りました。

交番長「次の当番までには必ず治して来いよ。次の当番は今日の分の仮眠時間は削るから仮眠はなしだぞ」

やりますともやりますとも。

一睡もしないで、見分も全部自分がやります。

その時はそれくらい思いました。

警察組織は理不尽なことでも根性論とかがすべてだと思っていました。

中には人情味ある方もいるものです。

きっと今はもう定年退職しているあの交番長。

あの時助けてもらったことは忘れません。

「情けは人の為ならず」を身をもって実感しました

交番勤務であり得るはずのない通し寝をさせてもらった経験でした。

実はこのずっと後ですが、もう一度だけ通し寝をしたことがあるんです。

その話はまたいずれ。


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