今年もあと少しで終わりですね。
私が警察官だった時、記憶に残っている年末年始の勤務から、二つの事案を紹介します
① 大晦日の夕方に発生した交通物損事故の処理で年越しをした
② 鑑識勤務の時の元旦当直勤務。元旦勤務は事件事故が少ないはずなのに。変死で翌日の新年会参加は最後の15分だけ
① 大晦日の交番勤務で、夕方に入った物損事故の通報が思わぬ展開に
警察官になって最初の年、交番勤務で大晦日の日の当番に当たった。
それまでの人生、大晦日の日はゆっくり家で過ごすのが当たり前だった私にとって、街中で勤務しながら過ごすというのはすごく違和感があった。
大晦日の朝から元旦の朝までの24時間勤務。
交番長のベテラン警部補はこう言っていた
「まぁ大晦日と元旦は事案の数は少ないから。勤務としては大変な日にはならないだろう。夕方に蕎麦屋に出前頼むぞ」
警察官として現場に出てまだ一年も経っていない私は、
「そうなのか、これまでの毎勤務いつも事件事故対応に追われていたけど、今日はすこしのんびりした日になるのか。よかった」
と思っていた、、、はずなのに
朝から夕方までは確かに、平穏で静かな日だった。
いつも必ず入ってくる事案がこの日はほとんどない。
夕方になり、交番勤務員みんなで蕎麦屋に出前のそばを注文した頃だった。
110番指令で交通物損事故の通報が入り、現場に行った。
この時は、物損事故だからいつも通り10分もあれば終わるものだと思っていた
事故の当事者は
年齢60代後半のおじいちゃんと、
30代後半くらいの中年男性だった。
おじいちゃんは一人で買い物に来た帰り
中年男性の車には知人らしき20代の男女3~4人が同乗していました。
車の損傷も少ないし軽い接触事故だな
さっさと処理して交番でソバを食べよう
そう思っていたが、面倒なことになった
両者の言い分が全然一致しないだ
どっちが悪いというのをお互い相手のせいにするということはよくある
警察官やってれば、人間自分の非を少しでも人のせいにしようとするのはよく目にすることだ
しかしこの時はそうではなかった
どこをどう走ってきて、どうやってぶつかったか
それがまったく一致しない
これでは事故報告書が書けない
さらに詳しく話を聞いていると異変に気がついた
中年男性とその知人たちの様子が何かおかしい。
何かそわそわビクビクしている。
時々耳打ちしたりもしている
中年男性を少し観察していて気が付いた
「あれ、あの項目にいくつか当てはまるぞ」
あの項目とは、酒気を帯びている人間の特徴だ
こいつ酒飲んでるんじゃないか、と思った私は
質問した「お酒飲んでます?」
どんな返答が返ってくるかは正直当てにしていない
飲んでいても正直にいう奴なんて5%くらいしかいないからだ
人間の言葉など当てにならないから、呼気検知しか信用しないのが警察官だが、一応最初に確認する
しかし彼はすんなりと
「すいません、ちょっと飲んでます」
と正直に認めた
すぐに呼気検査
しかしそのアルコール濃度は「ちょっと」ではなかった
この瞬間、すぐに終わる物損事故ではなくなった
交番に連れて行って赤切符処理に入る
出前で頼んでいた年越し蕎麦はもう台無しだ。
飲酒の経緯を聞いて驚いた
本件事故が起きたのは夕方
こいつらが飲み始めたのは前日の深夜からだった
こいつらは、飲食店の従業員仲間で、運転手の被疑者は店長、その他はアルバイト店員たち
前日の夜に店を閉店させた後、夜中から忘年会。
そのまま翌日の昼過ぎまで飲んで、そのまま店長は車で従業員たちを送っていたところで事故を起こした
飲んでいた酒の量はもちろん「ちょっと」ではない
店長だけでなく、同乗していた者たち全員交番や警察署の取調室で年を越した
そして、この店長の妻は、年が変わった元旦未明に、夫の身柄引受で交番に来なければいけなくなった。
こどもたちは、慌てて実家に預けてきたと言っていた
忘れられない年になったでしょう
私たち交番勤務員だって、交番の中でゆっくり年越しそばを食べながら年越しの瞬間を迎えたかったですよ
出前で頼んだ年越しそば?
つゆはなくっていて、蕎麦はぶよぶよ。
みどりのたぬきを食べなおしました
この中年男性のせいで、どれだけの人が不幸になったか
本人、妻、ぶつけられたおじいちゃん。。
蕎麦屋の美味しい蕎麦を台無しにされた、私たち交番勤務員も。
その日の勤務終了時の交番長が言ったこと
交番長、変な期待もたせないでほしかったですよ
②刑事課勤務の時の元旦の死体
元旦ならではの変死の発覚。夜勤明けに予定していた二日の新年会は最後の最後に顔出せただけ
鑑識勤務の時、元旦から翌日までの当直に当たりました
まぁ元旦と言うのは犯罪の発生は毎年少ない
元旦の朝から出勤は気分悪いけど、勤務としてはでかい事案も少なく、夜勤明けも早く帰れると思っていた
夜勤明けは最悪でも昼には帰れるだろうと思って、1月2日に知人親戚たちと午後から新年会参加を予定していた。
しかし、元旦の午後、まさかこれだけはないだろうと思っていた事案が入ってしまった
変死でした
まさか元旦から死体とは
もう現場に行く前からうんざり
今日は本当に元旦か?
死体発覚の経緯がこれまた腹立つ
30代の女性が、正月だから数か月ぶりに一人で暮らしている70代の父親のアパートを訪れたところ死んでいた
それはそれは寂しいアパートの一室で亡くなっていました
なぜ?
なぜ?元旦に行く?
なぜ私たちが当直勤務の時に行く?
あと10時間でいいから遅ければ翌日の当直員が喰らったのに。
変死なんて何件もやったけど、さすがに元旦の変死はガックリきた
翌日、退勤時間の9時半には当然死体処理は終わらず、予定していた新年会には大遅刻。というか、とっくにお開きにしている時間だったにもかかわらず私が来るのだけを待ってくれていた
死体の臭いがする私が到着して、一杯飲んで、「じゃそろそろお開きに・・・、いいかな?」
はい、死体臭もってきてすみません
もっとひどい年末年始勤務も実はありましたが、ブログにできるのは今回の二つくらいかな。
多くの人にとってお休みの時期である年末年始
その時期でも、110番すれば警察官は来てくれる
119番すれば救急車は来てくれる
大晦日の深夜でも、元旦の朝でも、いつでも来てくれる
でも、その人たちもまったく私たちと同じです
この時期くらいは休みたいな、
大晦日や元旦くらい家族と過ごしたいなって思ってる
それでも、誰かがやらなきゃいけないからやってくれている
本当にご苦労様で感謝していますと言いたいです
だから、せめて仕事が増えないでほしい。
退勤時間にはすぐに帰ってほしい。
この時期でも、警察官の負担を増やす連中はたくさんいます
酔っ払い、置き引き、スリ、空き巣、飲酒運転
私たち一人ひとりが少し気を付けるだけで、そういった連中による害は大きく減らせます
人ごみでは絶対に貴重品を肌身離さない
量を誇るだけの意味のない酒の飲み方はやめる
一人で住んでいる高齢者にはこまめに連絡を入れる?
・・・
誰でも簡単にできます
おだやかで平和な年末年始にしてあげましょう
今年もコメントやメッセージをくれた方々、有料記事を購入してくれた方々本当にありがとうございました
細々やっているブログですが、読んでくれている方がいることが本当に嬉しくモチベーションになっています
今年はブログを通して今までなかったようなこともありました
今後は、自分の思い出話よりも、もっと人の役にたったり、悩みを解決できるような内容にできないか考えています
来年もよろしくです
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