交番警察官の一日(夜の部)

地域課・交番・パトカー

前回の記事→こちら駅前交番。本日も事案多発中(昼の部)

朝から始まった交番勤務は日没を過ぎて20時を回った。

しかし、長い24時間勤務はようやくここで折り返し

むしろ大変なのはここからだ

夜になると、通報件数自体は減るが、粗暴犯や凶悪犯など、業務負担の重い事案の発生が増える。

高校生の万引き処理をしていた日中とは、町はちがう顔を見せ始める

交番警察官にとって大変な仕事が増えるのは、この後半からだ

今日は無事に仮眠を取れるだろうか、それとも徹夜になるのか

明日の夜勤明けの夕方には彼女とデートの約束がある

それをキャンセルしなくてはならないような事案は発生しないでくれ

そんなことを思いながら、夕食の弁当を買って交番に戻ると、食べる前に110番が入った

「自動車盗の通報」

やれやれ、自動車盗は窃盗事件の中でも大型の盗難事件だ。今から現場に行って、夕飯は早くても22時かな

現場に向かった

20時 自動車盗の通報で現場へ

自動車盗の現場に向かおうと地図で場所を確認したところ、

「え?ここで?」

そこは駅前の大型ショッピングモールの立体駐車場だった

20時であれば、つねに人の往来は激しい場所

時間帯にしても、場所としてもかなり珍しいケースだ

違和感を感じた。本当に盗まれたのか。もうひとつの可能性が頭をよぎる。

まぁ通報が入った以上必要資材をもって現場に向かう

現場に着くと、通報者である50代のおばさん(女性)が待っていた

「おまわりさん、車がなくなってるんです。3時間前にここに止めて買い物と食事をして戻ってきたらないんです。私の大切な車なのに、どうしたらいいんですか」

かなり取り乱していて、声も大きい。ちょっとうるさい

まぁ車がなくなっていたら確かに相当なショックだろう。取り乱すのも無理はない。

しかし、私はやはりまだ違和感が消えない

こんな時間にこんな場所で盗むか?

 

盗難の被害届を受ける前に、もうひとつの可能性を先に確認することにした。

特に相手の年齢や、冷静になれていない取り乱し方も気になった。

「車を駐車した場所はここで間違いありませんか?立体駐車場は駐車した場所がわからなくなる人も多いので」

「まちがいないですよ。おまわりさんが来る前にこの周りは一周確認もしました。盗まれた以外ありません」

「この4階駐車場のここの駐車スペースで間違いないんですね?」

「そうです。確かに4階の、、、あれ?ここ4階?

いいえ、私が止めたのは確かレストラン街の3階だったかもしれない」

ほら来た。どうせ自分で止めた場所を間違えて、よく確認もしないで110番したんだろう

すぐに3階駐車場に一緒に確認に行く

「あー!私の車。よかったぁ。私ったらいやになっちゃう。」

いやになるのはこっちだ。

マジで110番有料制は真剣に検討すべきだと思う。

こんなことで振り回されて、ウソの笑顔を作れるほど私は偽善者ではない

無表情で「盗まれていなくてよかったですね。これからは慌てずに確認して下さいね」

アホらしい!二度と来るな

駅前交番というのは、本当に一日中こういう無駄な労力の通報に追われるのです。

まぁ本当の自動車盗だったら処理に二時間はかかる。

15分で終わったんだからよしとするか

さっさと現場を後にして交番にもどって、この日は21時には夜ご飯を食べることができた。

前回の勤務の時は、夕飯を食べたのは深夜1時だった。

今回はいい感じだ。

 

21時を過ぎると増えてくるのが酔っ払い関連の事案

駅前交番の警察官にとって、重い負担となるのが酔っ払いだ

前回の記事で出てきた通報魔と、夜に増殖する酔っ払いは交番警察官にとって、天敵というよりも害虫という言い方がふさわしい。

酔っ払いは本当に最悪だ

酔っていれば、許されないことでも許されると思っている

路上で大声で叫ぶ

通行人にからむ

路上で寝だす

ケンカ、わいせつ事案

これらは酔っていようがなかろうが、許されることではない

それなのに、日本はなぜか酔っ払いに甘い風潮がある

酔っている時くらいは大目に見てあげよう

これは間違っている。

 

真冬に酔っ払いが路上で寝込んでいて、警察官が保護してあげずに凍死した場合、警察官の責任が問われることすらある

こんなのは完全に自己責任であって、怪我しようが何しようが警察官の責任ではない

自分に合った適切な飲酒の仕方ができない者は、その代償は自分で受けるべきだ

とにかく日本は酔っ払いに甘すぎる社会だと思う

その間違った感覚の尻拭いをさせられているのが駅前交番の警察官たちだ

毎勤務、酔っ払いのせいで駆けずりまわされた経験から私はこう思うようになった。



23時 パトカーで暴力団事務所近辺のパトロール

私のいた交番の駅前繁華街には暴力団事務所がいくつかあった。

夜は定期的にパトカーの姿を見せておく。

ついでに、さらに広範囲にパトロールをしていると、

0時ノーヘル二人乗りの原付を発見、

最近目撃されているひったくりの被疑者と特徴が似ている。

「二人乗りのバイク止まりなさい」

すぐに停止を求めたが、奴らは従うことなく逃走を開始した

サイレン吹鳴、赤色灯点灯 緊急走行に切り替えて追跡開始

無線で応援要請。付近にいるパトカーや機動捜査隊、交通機動隊とも協力して包囲したいところ

相手は市街地の道路をすばしっこく逃走していく。

市街地では4輪よりも小回りの利く原付の方が機動性に優れている。

なんとしても確保したいが、ノーヘルの違反だけではパトカーをぶつけて転倒させることまではできない。

しばらく追跡したが、結局逃走され見失ってしまった。

しばらく流動警戒を続けたあと、交番に戻った

 

この日の仮眠は深夜3時から6時の予定だ。

この後、何も事案が起きなければ3時間の仮眠が取れる

あと、2時間ちょっと、どうか平穏でいてほしい。

しかし、そういったことを意識してしまった時ほど何か起こる

 

深夜1時 ケンカの通報 傷害の現行犯逮捕

駅前で酔っ払いがケンカをしているとの通報が入った

現場に行くと

あ↘↘

顔面血だらけの男が大声を上げている

これは事件になりそうだ

この時間に事件が入ると仮眠がなくなる。最悪だ

血だらけの男から数メートル離れたところでは、別の男が大声を張り上げて、数人の男たちがそれをなだめていた

事情聴取を開始。

大声を上げている二人の酔っ払いがケンカしたようだった

顔面血だらけの方は殴られて負った怪我だった。

事情聴取していると、背後から偉そうな声が聞こえてきた

「おい、どんな状況だ」

あー、来た来た。今日は早いじゃん。

この偉そうな態度。

振り返らなくてもあいつらが来たことがわかる

刑事課員だ。

なぜ刑事課員は交番員に対してあんなに偉そうなのか

刑事課と交番員は上下関係にあると錯覚しているのか

声をした方を振り返ると、作業着のような服装で、「捜査」とか「刑事課」とかの腕章を撒いた4人の刑事課員がいた。

後からやってきて、まるで下請けに対する態度のように交番員に状況を説明させる

特に警察学校を卒業したばかりの若手などに対しては必要以上に厳しい

「そんなんじゃ状況わかんねぇだろうが!」 怯えて萎縮する若手。

状況を把握した刑事課員により処理方針が決まった

「傷害で現行犯逮捕ね」

これで今夜の徹夜は決定した

一人の人間を逮捕すると言うことは実は大変なことなのです

ドラマのように手錠をかけて終わりではない

大変なのはその後なのです。

深夜1時に逮捕したとすると、その処理が終わるのは早くても朝5時頃までは掛かる

逮捕に伴う業務をするのは刑事課員だけではない。

現場にいち早く到着した私たち交番員も逮捕書類を作成しなくてはならない

こうして、深夜1時過ぎから逮捕手続きが始まった

終わったのはやはり早朝5時頃。

バイクの運転ですら居眠り運転しそうなくらい眠くてフラフラだ

もう私が仮眠できる時間は残されていない

あとは、8時半すぎに交代要員が来るまでこれ以上何も起きないのを願うだけだ

 

9時 勤務終了

長かった24時間勤務はこうして終わった

しかし、この後すぐに退勤はできない

長い時では、このまま夕方まで残業になる。

逮捕事案があった日は、ほぼ間違いなく刑事課に呼ばれる。

 

 

今回の勤務は、交番勤務ではよくありそうな代表的な事案で想定してみました

今回出てこなかった事案も数えきれないほどあります

逮捕事案はさすがに毎勤務は起こりません

しかし一件入ると本当に大変なんです

 

交番警察官はどんな勤務で、どんな仕事をしているのか

それを知りたかった人が、イメージできるように考えてみました

もっとディープな内容については有料記事でも紹介しています

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