前回の「頭部の無い首つり死体の謎 1」
の続き。
白骨死体のほぼ全身が出てきたのですが、最も重要な頭蓋骨がなかったのです。
首吊りで自殺した人が、自分の頭部をどこかに持っていけるわけがありません。
頭蓋骨がないまま、事件性の無い自殺として処理できるわけがありません。
明日のデートの予定は潰れそうな予感が走りました。
他にも靴が片足ありませんでした。
この状況はまずいです。事件性を視野に入れた活動が必要になってしまうかもしれません。
Contents
必死に頭がい骨を探す刑事課員たち。
すぐに死体周辺を全員で探すことになりました
靴は死体から少し離れたところですぐに見つかりました。
靴だからきっと少し歩いたのでしょう。
うん、そうにちがいない。たまにはそんなこともある。
しかし頭蓋骨が中々見つからない
全員が焦り始めまる。
生い茂る木や草をかき分けて、頭蓋骨を探します。
9月下旬の晴天はまだまだ暑さが厳しい。
長袖では暑いため、袖をめくって草木をかき分けていたところ、腕にチクチクっと痛みが走りました。
変な草にでも触ったかなと思っていたところ、数分後には腕にものすごい湿疹が出てきました。と同時にものすごいかゆみと痛みも出てきました。
どうやら草木の中に毛虫がいたみたいで、思いっきり腕で触ってしまったようでした。
もちろん薬などないし、森から出て医者に行けるわけでもありません。
毛虫のかゆみと痛みはものすごいです。気が狂いそうになる。
完全に集中力を失った状態で捜索を続けました。
さらに1時間近く経ち捜索範囲を広げていく。
すると今度はまた別の恐ろしい害虫の登場。
スズメバチの巣があり、1人が刺されるところでした。
すでに日が落ちてきてしまった。
スズメバチも出てさすがにこれ以上は続けられないということで、その日の捜索は打ち切って署に戻り、明日再開ということになりました。
当初の、自殺体としてすんなり終わる予定とは全然ちがう事態になっていました。
帰りにドラッグストアで虫さされ薬を買って塗ったけど、症状はまったく変わらない。
毛虫刺されは本当に地獄です。
毛虫に直接触らなくても、毛虫から抜けた毛が風で飛ばされてそれが皮膚に触れただけでも毒が入るそうです。
あの苦しみは二度と経験したくありません。
貴重な仮眠も全然眠れませんでした。
何としてでも頭がい骨を見つけなくてはならない。翌日は武器屋で装備品を整え、ポーションも用意してダンジョンへ
日が変わり翌朝、交代の当直員たちも一緒に捜索に行くことになりました。
署で骨の検視などを行う数人を残して、森の中での頭蓋骨捜索が再開されました。
残念ながら捜索出発前に皮膚科には行けず、まったく改善しないかゆみと痛みのままもう一度その森に戻ることになりました。
ハチの殺虫剤を大量に購入し、飲み物やちょっとした食事も持って再び森の中へ。
毛虫刺されのかゆみでほとんど寝れず体調はひどい状態でした。
もし午前中に見つからなければ、その時はどこかの学校の理科室にあるレプリカの頭蓋骨をどっかで入手して、それを見つけたフリして早く終わりにしたいと考えてました
死体現場に到着し、まずはハチと戦いです。全員でスズメバチの巣に向かって超大量の殺虫剤をこれでもかと噴射。
私だけは、昨日毛虫に刺されたところにも空爆を加えておきました
まだまだひどいかゆみと痛みは続いて、あの毛虫だけは絶対に許せなかった。
できることなら、けん銃で撃ちぬいてやりたかった
捜索が再開され、どんどん範囲を広げていきます
ものすごい草木です。5メートルも離れるともうお互いの姿が見えなくなる。
もうここまで広範囲になると、例え頭蓋骨が見つかったとしても、あまりにも死体からの距離が離れすぎている。
死体がロープから落ちた時に転がった、などと結論づけるには無理のある距離です。
「ありました!」見つけたのは一番若手の刑事課員だった。
捜索を始めて2時間くらい経ったころ。
他の人の姿どころか物音さえもほとんど聞こえない距離まで捜索範囲は広がっていました。
私自身はもうほぼ諦めていました。
「ダメだ。頭がい骨がなくて本部の検視が自殺として認めるわけがない」
その時でした。
遠くの方から
「ありました!!」「写真お願いします」
という声が聞こえた
刑事課に入ったばかりの20歳の若手刑事の声でした。
しかし声は聞こえるのですが、茂みが深すぎてどっちの方向にいるのか全然わからない。
森の中って本当に方向感覚が無くなるということを知りました。
「どっちだ?!」
「こっちです!」
「こっちってどっちだ?!」
「死体の右足先の方向に真っすぐ行った方です」
そんなやりとりを続け、なんとか彼のいる場所に辿り着くと、確かにその足元には頭がい骨がありました。
写真撮影や位置測定を行い頭蓋骨を回収しました。
死体からの距離は、30~40メートルは離れていたと思います。
頭蓋骨には、他殺を示すような痕跡は認められませんでした。
その後身元調査を行い、亡くなっていたのは免許証と同一の行方不明になっていた人と判明しました
私たちが署に戻ると検視室には、標本のように白骨が並べられてありました。
最後に頭部が添えられました。
なぜ頭がい骨はあれほど離れた距離にあったのか?
これは結局わかりませんでした。
現場も詳細に確認しました。
確かに死体の場所から頭がい骨のあった地点までは緩やかに下ってはいました。
でも頭がい骨がコロコロ転がっていくような傾斜ではありませんでした。
みんなでいろいろ言いました。
動物が加えて持っていった
強風によって少しずつ動いていった。
など・・。
確かに人骨の中で、もっとも球体に近く、転がりやすい形はしている。
でも・・あの距離だけ移動する理由としてはどれもしっくりこない。
結局、決定的な理由はわかりませんでした。
その後必要な調査を行い、事件性の無い自殺として終了しました
夜勤明けの夕方にようやく皮膚科に行き、薬をもらいました
でも、5日間くらいはひどいかゆみと痛みがなくなりませんでした。
山菜取りに行って死体を見つけたい人は、刑事課員のためにも害虫がいない時期にして下さい。
あの事件の結論はあれで本当真実だったのか。
今でも記憶に残っている変死体のひとつです。
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