誤認逮捕はなぜ起きる?そもそもほとんどが「誤認」ではない

刑事課の仕事

またも誤認逮捕が起きてしまいました↓

タクシー窃盗で女子大生を誤認逮捕 ドラレコ映像を「思い込み」【愛媛・松山市】

誤認逮捕

字だけみれば、誤った認識による逮捕という意味です。

しかし、実際に捜査を経験した人なら誰でも思うはずです

誤認という表現は適切ではないと。

 

人間なら誰でも間違える時がある。

それはその通り。

でも、ほとんどの誤認逮捕は「間違い」ではありません。

基本に忠実にやるべきことをやらなかった、怠慢や不作為がほとんです

誤認逮捕はそれが起きる前に防げるチャンスが何度かあるんです。

今回のこの事件、警察が無実の女子大生を疑った理由はドライブレコーダーの映像だそうです。

ドラレコに映った窃盗犯。

その犯人はタクシーを降りた後にアパートに入っていった

そのアパートに映像とよく似た女子大生が住んでいた。

 

なるほど、確かに疑う一つの理由ではあります。

 

しかし、問題はここからです。

これだけで彼女を被疑者と決めつけるなんて、警察官じゃなくてもおかしいと思いますよね。

逮捕するにはもっと証拠を集める必要がある。

他の証拠を集めていけば、この女子大生を逮捕するのは危ないというのは絶対わかってくるはずなんです。

特に重要なのがやはり物証です。

被害者や目撃者の証言は間違うことがあっても、物証は嘘をつかない。

例えば

タクシーに乗っていれば車内に指紋や足跡なども残るでしょう。

タクシーの中から女子大生の指紋や足跡は見つかっているのか。

カメラに映っていた女が着ていた服は、女子大生の部屋にあるのか

タクシーに乗った場所はどこで、女子大生がその乗車場所まで行った足取りは?

 

こういう捜査を積み重ねていけば、彼女を犯人とするにはつじつまが合わないことが必ず出てくる。

当たり前です。

犯人じゃないんだから。

きちんとやるべき捜査をやれば、女子大生を逮捕するのは危険というのは必ずわかるものです。

そういったやるべきことをやらずに、最初にカメラ映像で有力な人物が浮上したから決めつけたのでしょう。

誤認逮捕などという言い方は正しくありません。

やるべきことをやらなかった怠慢逮捕、不作為逮捕です。

刑事課の中には逮捕は危険だと気が付いていた捜査員も必ずいる

これだけ間抜けな誤認逮捕です。

私は、功を焦った一部の警察官たちが煽り立てておきたことだと思っています。

これは逮捕してはいけないと考えたまともな刑事たちもたくさんいたはずです。

私は鑑識もやっていたので思うのですが、おそらく鑑識の人たちは逮捕には反対したと思います。

だって、防犯カメラ映像以外に、女子大生が犯人である証拠は何一つ出てこないんですから

犯人じゃないんだから出てくるわけもない。

刑事課内ではそういった逮捕に反対する意見も必ずあったはずです。

誤認逮捕は、鑑識の物証を検討せずに、目撃情報や証言だけで決めつけた場合に起こることが多いですね

では、そういった相反する意見を統合して最終的に逮捕を決める責任者は誰か。

逮捕すべきかどうかを決める責任者は誰か

逮捕しよう、

いや逮捕すべきでない

正反対の意見が出る中で、最終的に決定するのは誰なのか

もちろん議会のような多数決方式ではありません

 

今回の女子大生が被害者になった事件では、逮捕を決定した責任者は

形式的には警察署長で、

実質的には刑事課長でしょう。

刑事課員たちから出てくるいろんな情報や意見は刑事課長の下に集約されます。

そして、刑事課長が決定し、副所長→署長決裁と上がっていく。

最終的に署長が決裁すると、逮捕状請求書を裁判官に持っていく。

こういった流れです。

誤認逮捕を防げる機会は数回はある

つまり、捜査員の誰かが「映像の犯人と住人の女子大生が似ている」と思った時点から、実際に逮捕するまでには、ストップできるチャンスが何度もあるんです。

刑事課長が優れた人であればまずそこで止められる。

刑事課長がアホでも、副署長や署長が優れていればそこで止められる。

 

ただ、署長がアホな場合は難しい状況になります

刑事課長は逮捕に反対なのに、署長が功績欲しさに強引に逮捕に踏み切らせれば、逮捕は実行されてしまいます。

でも、それはあまり考えられない。

刑事課長が逮捕しようと思ってないのに、署長のトップダウンで逮捕しろ、なんてことは考えにくい。

まぁいずれの場合においても、刑事課長と署長のどちらかさえまともであれば、誤認逮捕はストップできる機会があるんです。

今回の事件は被害額が5万円くらいなので、捜査三課などの本部の参入はなかったでしょう。

そうすると、最終的に逮捕を決定した最大の責任者は刑事課長か署長ということになります。




なぜやるべき捜査をしてないのに署長決裁までいってしまうのか

最大の理由は、功績を焦った一部の警察官たちがやったことだと思います

この警察署の窃盗担当の刑事の中の誰か

刑事課長

署長

この3者が、早く検挙実績を上げたいと思ってやったことでしょう

真摯に慎重に真実を明らかにするという姿勢であれば、他の鑑識資料を検討し逮捕の条件は到底満たしていないと判断できたはずです。

被疑者が割れた(判明した)!という時に止められない波が起きる

私も刑事課で勤務してたのでわかります

有力な被疑者が浮上すると、もうこいつを犯人にしたいという勢いが止まらなくなるんです。

そうなると、女子大生を犯人にするには都合の悪い証拠は、都合よく解釈されてしまう

鑑識の反対意見は検討されない

誤認逮捕というのはそういう時に起きる。

 

まって!誤認逮捕の責任は警察だけじゃない

誤認逮捕というと警察がとんでもない失態をしたと言われます。

それは確かにそうです。

でも、誤認逮捕は警察だけではできません。

なぜなら逮捕状は警察が発付できるものではないからです。

逮捕状を発付できるのはどこの機関の誰でしたっけ?

そうです、裁判官です。

今回のこの事件も現行犯逮捕ではないでしょうから、必ず警察官が裁判官のところに行って逮捕状の発付を受けているはずです。

警察が捜査して、有力な被疑者が固まると、それまで集めた証拠資料を裁判官に提示します。

「こういう証拠が集まったので、この人物を逮捕しようと思います。逮捕状下さい」

だから今回のこの事件でも、どこかの裁判官が警察が見せた証拠見て「逮捕していーよ」と逮捕状を発付しているはずです。

だからここにも誤認逮捕を防げるチャンスがあったのです。

もし裁判官が、映像と似ているだけしか証拠がないなら逮捕状は出さない、と判断していれば誤認逮捕は起きなかったのです

だから、誤認逮捕の責任は逮捕状を発付した裁判官にも少しはあります。

そもそも令状主義というのは、捜査機関の間違いや横暴を防ぐためのものですよね。

それがまったく機能しなかったということ。

この女子大生の逮捕状を発付した裁判官は、まさか「警察がとんでもない失態をしたな」などと他人事と思ってないでしょうね

 

この尻食いは県民・国民が負担する

この女子大生は、国に対して賠償請求を起こすべきです。

例え数日であっても、大きな損害や苦痛を受けている。

さらに逮捕だけでなく、自白を強要するような取り調べもあったようです。

警察側は否定していますが、まぁ女子大生の言っていることが本当でしょう

賠償訴訟を起こせばもちろん賠償金支払いの判決が出るでしょう。

でも、その賠償金て税金から支払われるんですよね。

いい加減な捜査で逮捕を決めて、女子大生に自白を強要しようとした低スペックな一部の警察官たちの尻拭いは、県民国民がしなければならないのです。

最後に、現場最前線で激務に耐えている刑事たちの名誉のために

最後に、今回の誤認逮捕をもって、警察はこんないい加減な捜査で逮捕するのか、とは思わないで欲しいです。

全国のほとんどの警察官たちだって、カメラ映像と似ているだけで逮捕するなんて信じられないくらいアホだと思ってます。

本当に信じられない

たまたまこの署の刑事課には自分の功績を誇示したい警察官が何人か集まってしまったのでしょう。

95%の刑事課員たちは、こんなアホでいい加減な捜査はしません。

今も酷暑の中、現場を飛び回ってる刑事たちの名誉のためにそれだけはここで断言しておきます。




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